春夏秋冬 Ⅱ
春夏秋冬 Ⅱ
成人向
発行者:ほおずき
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:春夏秋冬

公開開始日:2012/05/27
最終更新日:2012/07/12 19:23

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春夏秋冬 Ⅱ 第2章 歌と花と
笑ってグラスを渡してくれる弥生様に、微笑み返して隣に座った。


「、明日は?」


「悪いな。明日は仕事だ。
次に皓の舞台が見えるのは、一週間後かな」


今日は金曜の夜で、俺は明日の夜も歌う予定になっていた。

店のコンセプト自体が、派手なことを嫌う隠れ家だったから、さほど目立つ訳じゃないが、俺の歌はこの店の一つのイベントと化していた。



「なんだ。今週、もう会えないんだ」



「可愛いな君は。
今晩はつき合うよ、私の可愛い歌姫に」


「朝まで?」


上目遣いで窺えば、長い指がしっとりと俺の目尻を撫でて、耳の後ろや首筋に流れた。


「君がいいならね」


「ん‥」


甘えた声で鼻を鳴らして、弥生様の指に擦りよって甘えた。


「今週の予定はこの店だけ?」


「ううん。
もう一カ所小さなホールで歌う」


「盛況なんだろう?」


だんだん、俺の歌を喜んでくれる客は増えていて、小さなホールに呼ばれることもあった。依頼は全てこの店のオーナーである橘が受けて、俺が都合のいいのを選んでいた。


「でも、ここのお客さん以外は、歌、聞いてくれてるのか分からない」


この店の客はみんな品が良くて、大人しい。静かに最後まで歌を聞いてくれるけど、安いライブハウスで歌った時は下品たヤジを飛ばされ、写真ばかり撮られた。

耐えがたくて、結局橘の店の専属歌手というスタンスをとり、ごく偶にくるホールの以来だけを受けていた。



「変な客に付いていっては駄目だよ」


「しないよ、そんなこと。
それより、行こう」


俺はグラスを空にすると、弥生様の腕を取って立ち上がった。


「夕飯まだだろう?食べないの?」


「いらない。別のものがほしい」


「困った子だな。だからそんなに痩せてるんだ」


しょうがないな、と言いながらも、突飛な俺の行動に慣れている彼は、呆れるでも怒るでもなく席を立った。



身体が熱くて、早く慰めて欲しかった。



「興奮してるんだ」



弥生様は、知ってるよ、と笑った。
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