SITIGMA Side-Koichi Vol.1
SITIGMA Side-Koichi Vol.1
成人向完結
発行者:とりさん
価格:章別決済
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ジャンル:その他
シリーズ:STIGMA

公開開始日:2012/05/10
最終更新日:---

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SITIGMA Side-Koichi Vol.1 第2章 1
「へえ! そうか。おじさんも好きだよ。もってるの? 全部読んだ?」
 ぼくは首をふった。また少しかなしい気もちになった。
「ないのか……じゃ、全部かしてあげるよ。それともうちで読む?」
 ぼくはうれしかったし、読みたかった。けど、返事できなかった。
「遠りょ深いなあ。おとなり同士で何も、そんなに気をつかうことないよ。これかいてる人のマンガだと、他に……」
 おじさんはマンガにとてもくわしかった。ぼくはやっと、そのマンガのどういう所が好きで、とかいう話を、おじさんにきかれるままにだけど、話すことができた。こんなにしゃべったこと、生まれて初めてだった。だんだんぼくは、こうふんしてきていた。一人で思うだけで、だれにも話さなかったことを、おじさんに話す。おじさんは笑顔で、聞いてくれた。いつの間にかおじさんをこわいと思わなくなっていた。
 おじさんはぼくを、たたみの部屋にもあん内してくれた。そこはうちと違って、本だらけ。マンガも一ぱい。リビングと違って、かなりちらかっていたけど、ぼくには宝の山に見えた。大人になったら、好きなだけ自分の本やマンガを買って、家におけるようになれたらいいな、とか思った。
 ぼくは読みたいこうほのマンガや本を一ぱい選んだ。いろいろ、マンガの話、しながら。おじさんとぼくでそれを、リビングのすみに運んで、つみ上げた。
「意外とよくばりだなあ。幸一」
 おじさんはまた、ぼくの頭をちょんとついた。ぼくは赤くなったと思う。
「……ごめんなさい」
 ぼくがうつ向いてぼそぼそあやまると、おじさんはしゃがんで、ぼくの正面に回り、ぼくのほおに手を当てて、ぼくの顔を下から、のぞきこんで、言った。
「いいんだよ。きんちょうがとけてきたしょうこだ。幸一が楽しくなった方が、呼んだおじさんもうれしいに決まってるだろ?」
 そう言われて、ぼくははますます、顔が熱くなった。おじさんはやさしい。こんなにやさしくされたのは、ぼく、初めてだった。だれにでもやさしい人なんだろうか。だったら何で、ぼくは最初この人を、こわいと思ってしまったんだろう。

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