創作話 「ゆる坂の狐」
第1章 創作話 「ゆる坂の狐」 第一話
ある所まで 来た彼は
大きな岩を見つけて
徳島の町並みが 見える
場所に 腰を下ろし
一休み しようとした
座って見ると 眺めも良い
まだ 日の高い その場所から
自分の 町を眺めていた
目の前には 自分の背より
高い夏草が ある部分だけ
すっぽりと 生えておらず
まことに 見通しが良い
ふう・・・ と彼は
溜め息をついた
何度もこの路を
登ってきた 彼だ
幾ら慣れているとはいえ
やはりさすがに 疲れるのだろう
町を眺めながら 背中に背負った
荷物の中から お茶の入った
竹筒を取り出し 蓋にしている
竹筒に 注いだ
まだ 温かく 湯気が
彼の顔を 包み込み
お茶の香りに 包まれた
彼は 鎌を 足もとに置いて
旨そうに グイっと
お茶を 飲み干した
渇き切った 彼の喉を
潤しながら 胃袋へと
落ちてゆく
ハアァ---- と
大きな溜め息をつく
見下ろす 町並み
空は どこまでも
真っ青で 雲一つない
良い天気だなあ と呟いた
何処かで ウグイスの
啼く声がする
------つづく------
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