僕と彼女のビート
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発行者:美心(mishin)
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2012/04/24
最終更新日:2012/09/16 23:29

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僕と彼女のビート 第5章 僕の喪失、彼女の心
「…中学を卒業したら、親父の仕事を継ぐことになってたんだ。だから別の仕事とか、進学は考えたこともなかった。
それが、知らない間にこんな風になってさ、そりゃあ、何かかっこいいことをしてやりたいとは思うけど。
例えばギターと歌とかね。ただ自分ではそんなにずば抜けてるわけじゃないと思うし。

なんだか、今の自分のこと以外はよく分からないよ。」

一息に話して、僕はまた新しい煙草に火をつけた。

ジェニーは僕の顔を見つめている。

そして言った。

「…いろんなことができるのに。」


僕は言った。

「なぜいろんなことをする必要がある?僕はどうしたって給料も上がらないただのブルーワーカーさ。仕事に行って家賃を払って、あとはでたらめだよ」


ジェニーは僕の煙草を手から取り上げて灰皿に押し付けた。


「煙草の吸いすぎでインポにでもなったのかしら」


ジェニーは続けて言った。

「そりゃあ私たちはろくでなしかもしれないし、今は日銭を稼ぐのがやっとかもしれない。どうにもならないと思うことだってあるはずよ。
だけど、何も夢をみないなんてつまらない。戦う前から戦意喪失なんて。
どうせ何もないのなら、これから先なんてどうにでもなるわよ」


ジェニーがこんなに話しているのは初めて見た。


「『人生はお祭りだ』よ。」

「何、それ」

「フェディリコ・フェリーニの映画に出てくる言葉。今はお金がないかもしれないけれど、少し余裕ができたら映画も音楽ももっと知らないとね」


そのあと僕たちはまたいつもみたいにくだらない話を少しして、何杯かのお酒と食事を注文した。

僕はジェニーの奢りで大きなハンバーガーを初めてナイフとフォークを使って食べた。


僕たちは満足して店を出た。
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