僕と彼女のビート
第5章 僕の喪失、彼女の心
あれからマーシーは連れ戻され、僕はたったの3回しか会ったことのないジョージおじさんにため息を吐かれ、みごとに印刷所の仕事を失うはめになった。
ただ、アパートに住み続けることは許してもらえた。
そして1ヶ月分の家賃を借りてその間に新たな仕事を見つけなければならなくなった。
目の前の日常が精一杯で、先のことなんて煙草と酒ですっかりかき消していた僕は、このときになって初めて
「まいったな」
と思った。
「ジョンとヨーコごっこ」から2週間、マーシーからの連絡はなかった。
僕は何個か面接を受けては落ち、清掃会社に雇ってもらうことになった。
それだけでは収入があまりに少なかったから、日曜日はたまにこっそり警備員のアルバイトも入れることにした。
清掃の仕事で給料が入るまで、しばらくは酒が買えなかったし、ライブハウスに行ってルーシーやジェニーと遊ぶこともできなかった。
だけれど、警備員のアルバイトの初日にやっと日払いの給料を手にしたとき、僕はいつものバーに久しぶりに出向くことにした。
55