僕と彼女のビート
第2章 変化してゆく季節に
マーシーの、僕の叩いた方のほっぺたは赤く腫れはじめた。
「‥むりだよ、そんなの‥‥」
それまでマーシーは涙を必死に堪えていたようだったけれど、ついに顔を覆ってしまった。
「泣くなよマーシー!僕だって離れたくないんだよ!」
僕は怒ってるんだか悲しんでるんだか分からなくなったけれど、きっとその両方の感情が体を渦巻いていて、今までの我慢していたものが関をきって一気に溢れだした。
僕は人前でこんなに泣くことは一生ないんじゃないかと思うくらいに、泣いた。
僕たちの車両には誰も乗っていなかったことが、本当にラッキーだと思った。
大きな目で見たら何もラッキーなことなんかないんだけど。
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