僕と彼女のビート
第1章 僕たちの出会った日
僕はマーシーの頭にそっとくちびるをおしあててみた。
マーシーの汗の匂いがした。
それから、長いような短いような時の間、僕はうとうとしながらも時折吹き抜ける風に身震いして目覚め、また浅い眠りについては、目覚めてマーシーの寝息を聞いたりしていた。
起きている時間はとても長く感じられた。
意識の途切れている時間はどれくらいなのか分からない。
数分なのかもしれないし、もしかしたら数時間なのかもしれない。
今がどんなに長い時間に感じられても、絶対に終わりはやってくるのだ。
朝になってしまえば、マーシーとこうしている今は、過去になるのだ。
過去になってしまえばそれは、頭の中に入っている不確かな情報にしかならないのだ。
僕は非常階段の暗がりの中でそんなことを考えていた。
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