コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
アフィリエイトOK
発行者:風とケーナ
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第8章 雄々しき貴婦人
『寛大なる王陛下に謹んで申し上げます。


王陛下の御意図の中には、他でもなく、インカ族の者たちの妥当な扱いと保護の問題があるかと存じます。
ミタ(強制労働)に関して申しますならば、鉱山の採掘、貴金属の抽出にも増して重要なことは、王陛下の御慈悲が行われることであります。

わたしが申すまでもなく、もしインカ族の者が死に絶えてしまった暁には、もはや鉱山で働き、貴金属を抽出する者もなくなってしまいましょう。
そうなってしまえば、幾ばくかの貴金属の生産すら、もはやかなわぬこととなりましょう。


王陛下、あなた様はインカ族の民の窮状をご存知でしょうか。
鉱山での強制労働を言い渡されたインカ族の者たちは、二度と故郷へ戻らぬために、つまり、死ぬために、故郷の家を売り、家財を売って旅立っていくのであります。

インカ族の者たちは、故郷への思いも、これまで大切にしてきた家財その他への愛着も、可愛がってきた家畜たちへの情も、全てを犠牲にして、強制労働を言い渡された鉱山へと向かうため、その僅かな旅費を捻出するために、それらを売り払い、旅立っていくのであります。

妻と共に、息子と共に、あるいはただ一人、インカ族の民は故郷を捨てて強制労働へと旅立って参ります。
そして、コルディエラ山脈の谷と高原の難路2百里の道を歩みはじめるのです。

鉱山へと向かう道中が過酷であるとすれば、強制労働の期間を終えた帰路の道は、疲労と貧困のために、さらに難儀であります。
もっとも、普通は、帰路につける前に、二度と帰れぬ死路に旅立っておりますので、帰路に苦しむこともないわけですが。


それほどの状況が、永きに渡り続いているのであります。
王陛下、このような状況がこれ以上続いてはなりますまい。

何卒、その高貴な御配慮と御慈悲の下さらんことを、伏してお願い申し上げます』



この書面では、当初からトゥパク・アマル自身が最も心を痛めてきたことの一つ、あの鉱山でのミタの改善が中心的に訴えられている。

全てのことを一度に訴えることは、もはや望めなかったのだ。
せめて、最悪の部分から改善を求めていくしかなかった。


この嘆願書に対する副王の出方によって、最終手段に打って出る!

――トゥパク・アマルは決意を秘めた眼差しで、机上の不安定な蝋燭の光を見つめた。
95
最初 前へ 92939495969798 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ