さて、ここで再び、話をトゥパク・アマルの反乱計画に戻そう。
首府リマでの、あのモスコーソ司祭との目通りによって、この植民地の圧政は単に代官たちの非道によるものではなく、この国の統治機構の頂点に立つ者たちの意図もが絡むものであることを、もはやトゥパク・アマルは明確に認識せざるを得なかった。
彼の訴えを副王に口添えするとの司祭の口約束も、所詮はあの場凌ぎのものにすぎなかった。
敵は単に末端の代官だけではない。
真の敵は、もっとこの国の中枢にいる絶対的権力者たちなのだ。
それは受け入れたくない現実であった。
そして、それは、トゥパク・アマルに最終手段の選択を突きつけてくる現実でもあった。
いよいよその計画を実行せざるを得ない局面に、刻々と近づいていたのだった。
だが――と、彼は心の奥で呟いた。
最後に、あと一つ、やっておかねばならぬことがある。
トゥパク・アマルは自らのこれまでの軌跡を振り返った。
これまで、幾多の人々に会い、直接交渉に踏み切ってきたであろうか。
反乱軍に同盟者として加わってもらうためのインカ族の者たちは当然だが、スペイン側の重要人物とも会うべき人間とは会ってきた。
末端の代官はもちろん、植民地全権巡察官アレッチェ、そして、この国最高位の司祭モスコーソ。
彼は、水を打ったように静まり返った自室で、目を閉じた。
じっと自らの心の声に耳を傾ける。
残される相手――それは、この植民地最高位の権力者、副王ハウレギ、その人であった。