コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第8章 雄々しき貴婦人
一方、コイユールの背後から幼いながらも険しい眼で事の流れを見守っていた少年は、役人たちが立ち去るとすぐさま彼女の背後から飛び出し、その美しい女性の方に走り寄った。

「母上!!」


トゥパク・アマルの妻と名乗ったその女性、ミカエラは、少年をしっかりと胸に抱いた。

「フェルナンド、心配しましたよ。
お買い物の途中で勝手に離れてはいけないと、あれほど言っておいたでしょう」

それは、息子の身を心から案じる優しい母の声だった。



それから、茫然自失しているコイユールの方に向き、口調を和らげて話しかける。

「大丈夫ですか?」

コイユールは、息を吸い込んでから、やっと頷いた。


「怪我をしていますよ」

ミカエラは心配そうに、コイユールの額を覗き込む。


コイユールの額からはまだ血が流れ続けており、頬を伝って肩のあたりに血の雫が滴っていた。

慌ててハンカチで額を押さえる。
そして、深く頭を下げた。

「助けてくださって、どうもありがとうございました」

本当は、少年の怪我のことなど説明しなければならないことがいろいろあったのだが、何かひどく動揺していて、言葉にすることができなかった。



そんな彼女をミカエラは静かな眼差しで見つめ、それから、涼やかに微笑みながら諭すように言う。

「お気をつけなさい。
どんな無法なこともやりかねない者たちだから」


そして、女性は少年の手をしっかりと握り、露店への道を戻っていった。
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