コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第8章 雄々しき貴婦人
コイユールは、息を呑んだ。

まずいところを見られてしまった、と心の中で悔やむ。


この界隈でも、キリスト教以外の教えに由来する土着の思想や自然療法などに対する取り締まりや弾圧は、年々、厳しくなってきていたのだった。
コイユールの噂が、この辺りの役人たちの耳に入っていても不思議はなかった。


男たちに取り囲まれている彼女たちを、露店の通りにいるインカ族の者たちは息を詰めて遠巻きにしていたが、スペイン人の役人に物申せる勇気のある者は誰もいなかった。



コイユールは内心動揺しながらも、改めて男たちを観察した。

三人ともかなり酒が入っているようで、目つきがすわり、しかも酒のためか絡みつくような視線を向けてくる。
へたに刺激をしてはまずい、と思われた。


まずは、少年の身を安全にこの場から解放してあげねばならなかった。
コイユールは動揺を隠しつつ、つとめて沈着な声で言う。

「わかりました。
お話はゆっくりうかがいます。
でも、この子は関係ありませんので、この子だけは帰してあげてください」



コイユールは不安な面持ちで、背後にかくまっている少年を振り返った。

なんと、そのまだ幼い少年は、きっ、と険しい目を向けて、男たちを真っ直ぐに睨みつけていたのだった。


役人たちは少年の眼差しに気付くと、鬼のような形相になって目を吊り上げ、少年の方にズカズカと迫り来た。

「なんだ、その生意気な目は!!」

男の一人が、間髪入れずに、その頑強な靴を勢いつけて蹴り上げる。


「危ない!!」

反射的に、コイユールは少年の前に身を伏せた。


相手の蹴りが、コイユールの顔面にザックリと当たった。
目の上の額が切れて、真紅の血が滴り落ちる。


彼女は少年を胸に抱き締めたまま、役人たちを見た。
意図せずとも、その目は険しくなっていた。

「何をするのです!
まだ、こんなに幼い子どもではありませんか!」


思わず喰ってかかったコイユールに、役人たちも気色ばんで迫ってきた。
そして、彼女の手首を荒々しく掴むと脅すように凄む。

「お前、逮捕になっても、いいんだな?」


役人の目が、ギラギラと憎悪と汚濁に満ちた光を放つ。



その時である。

役人たちの背後から鋭い声が聞こえた。

「おやめなさい!」
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