コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第7章 司祭
コイユールは不思議そうに、首をかしげながらマルセラを見つめた。

貴族の娘のマルセラが調理など縁の無いことは知っていたし、それ以上に、女性的なことには全く無頓着で、むしろ少年のような志向のマルセラには、炊事場に立つなど考えられないことだった。


そんなマルセラは、年頃になった今も、相変わらず短く切った黒髪を無造作にターバンでまとめ、以前にも増してしなやかに伸びた手足を、ただ動きやすいという理由のために、露(あらわ)にしたままの格好でいた。
だが、成長と共に女性らしさが備わり、本人の意思とは無関係に、むしろその中性的な美しさが周囲の目を惹いていた。



コイユールは冷水で浸したマルセラの傷跡に自分の手を添えて、治療のためにいつもの祈りの言葉を唱える。

その間も、マルセラは微かに頬を赤らめながら、無言のままである。
コイユールには平素と様子の異なる今日のマルセラの心中を測りかねたが、いずれにしろ炊事場で何かをしようと思っていたのは確かであろう。


「何を作ろうと思っていたの?
手伝うわ」

そう笑顔でごく普通に問いかけた彼女に、「いい、いい!ほんと何でもないんだから!!」と、妙にムキになってマルセラが答える。

「そ、そう…?」

マルセラの口調に少々戸惑いながらも、コイユールはもう一度、火傷の跡を確かめた。



そして、だいぶ腫れがひいていることに安堵しながら、「そろそろ、アンドレスたちにお食事を出す時間かしら」と、何気なく呟いた。

すると突然、マルセラが大きく身を乗り出し、コイユールに突っかかってきた。

「あたし、前から、すっごく気になってたんだけど、アンドレス様のこと呼び捨てにするのって、すっごく、まずくない?!」

「え?」

不意をつかれたようにコイユールが目を見張る。


他方、マルセラはコイユールの鼻先まで、にじり寄った。

「ほんと、よく考えてごらんよ!
あんたとアンドレス様じゃ、身分も立場も何もかも、全然、全く、違うんだし!!」

と、そこまで言ってしまってから、マルセラはハッと自分の口を押さえた。


コイユールは固唾を呑む。
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