コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第7章 司祭
そして、今、その館の一隅には、そんなアンドレスをそっと見つめる少女、いや、少女から一人の女性へと成長しつつあるコイユールの姿もあった。


アンドレスと同年齢の彼女もまた、この3年間でずいぶん変わった。

風貌も、体つきも、女性らしく大人びてきたのは自然なことであるし、そこにいるだけで場の空気が柔らかく薫るような雰囲気は、その年代の女性たちに特有のものであろう。




しかし、それだけではなく、かつてと変わらぬ彼女の涼しげな目元には、以前にも増して包み込むような深い優しさが宿っていた。

彼女は、自らがこの国の社会の底辺を生きてきたと共に、その特有な自然療法の施術を求められ、はからずも数多くの底辺にいる人々と出会ってきた。
そして、信じられぬような窮状を、その渦中に身も心も晒しながら、生(なま)の体験として目の当たりにしてきたのだ。

それらの過酷な現実に直面する中で、その深い悲しみと絶望を、年端に似合わぬ慈愛と強さへと変えてきたのだった。



今、彼女は、広間から少し離れた場所から、トゥパク・アマルと同じテーブルを囲むまでに成長したアンドレスを眩しそうに見つめていた。





「あっ!…つっう…!!」

突然、背後の炊事場の方から悲鳴が聞こえた。

「マルセラ?!」

コイユールは慌ててそちらにとって返す。


調理用の鍋の傍で、マルセラが右腕をおさえて半ベソのままうずくまっている。

その辺りをインカ族の召使いたちが数名、心配そうに取り囲んでいた。
恐らく慣れない調理などしようとして、火傷か何かしたのだろう。

コイユールは周りの人たちに頭を下げながら、心配なさらずお仕事の続きをなさってくださいと伝え、自分がマルセラの傍に膝をついた。
そして、スラリとした褐色の彼女の腕を、そっと自分の手に取った。


幸い、手首の少し下あたりに軽い火傷を負った程度である。
コイユールはホッと息をつき、急いで冷水を運んできてマルセラの傷口を浸した。

「たいしたことなくって、良かったわ。
でも、どうしたの?
炊事場になんて立ったりして」
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