コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
アフィリエイトOK
発行者:風とケーナ
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第7章 司祭
司祭はまた細めた目で、今度は顔全体を歪めながら、すがりつくようにしてトゥパク・アマルの方に身を乗り出した。

「ひどいとは噂に聞いていたが、そこまで酷いのかね!
おお、そんなにか……!!」


一見、あまりにも白々しいと思われたが、トゥパク・アマルは言葉をぐっと呑みこんだ。
そして、感情を抑えながら、答える。

「はい。
何卒、実態をお調べになってください。
そして、どうぞ副王陛下にお口添えを願いたいのです。
このままでは、インカの民をはじめ、この国の虐げられた民衆は、本当に息絶えてしまいます」


トゥパク・アマルの前にすがるようにしていたモスコーソは、幾度も頷き、「わかった、わかった、そのようにいたそう」と、あっさり同意した。

そのモスコーソの様子に、かえってトゥパク・アマルは釈然としない思いに憑かれる。



「トゥパク・アマル殿……」

モスコーソは弱々しい声で呻いた。

「神の御前の子羊よ、この牧者の手の中から出てはならぬ」

トゥパク・アマルは、ひれ伏すようにしているその司祭の顔をハッと見た。


「妙なことを考えてはならぬぞ。
例えば、反乱行為など…」

モスコーソの目が、トゥパク・アマルの目を射抜くように鋭く光る。


伏せがちだったその体をゆっくりと起こしながら、モスコーソはトゥパク・アマルの表情をあの舐めるような視線で見渡した。
司祭の胸元の巨大すぎる十字架が、ゆらゆらと不気味に揺れている。


そして、今までの不自然に下手に出ていた態度を翻すように、大きく反り返り、トゥパク・アマルを睥睨(へいげい)した。

「美しいインカの末裔よ。
そなたが、かつてのインカ皇帝たちのように、あの処刑台に上るさまを見たくはないのだよ」


その目は完全に見開かれ、ギラギラと奇態な光を放っている。

 



トゥパク・アマルはその瞬間に至って、はっきりと悟った。


この司祭も、完全にスペインの権力者側の人間なのだ――と。
79
最初 前へ 76777879808182 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ