コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第7章 司祭
一方、先程まで遠慮がちに身を縮めて路の端を歩んでいた当地のインカ族の人々は、その壮麗な同族の商隊と、そして、同じインカ族とは思えぬほどに堂々たる態度で前進する馬上のその人を見て、まるで光を与えられたように胸を張って歩みはじめた。




永年に渡り社会の底辺に追いやられ、すっかり自尊心を失っていた彼らにとって、トゥパク・アマルが何者かを知らずとも、同じインカ族の一人の人間が放つその輝くような存在感と高潔な雰囲気は、それだけで彼らに再び民族の誇りを呼び覚ます力を秘めていたのだった。





その頃、この首府リマにあるペルー副王領の統治機構の中枢、インディアス枢機会議本部の執務室では、あの植民地巡察官アレッチェが、もう一人の別の人物と共に苦々しい表情で向き合っていた。

アレッチェは、普段はあまり見かけぬインディオの商隊が街に入って参りました、という報告を部下から受けたところであった。
しかも、何やら居丈高な雰囲気で、どうもインディオらしくない尊大ぶった人物がその中にいる、という観察も付け加えて部下は退室した。



トゥパク・アマルだ、とアレッチェはすぐに分かった。

彼の中に、一瞬、この機に乗じてトゥパク・アマルを始末してしまおうか、という考えがよぎる。
が、「インディオども」に妙に慕われているあの者に安易に手をくだすことは、逆に、それらインディオどもを下手に刺激することにもなりかねない。

ここは状況を見ていくしかあるまいか、と心の中で唾を吐く。



部下が下がると、アレッチェは憎々しげに言った。

「来たようですな。
モスコーソ様」

モスコーソと呼ばれた人物は、「うむ」とおもむろに頷いた。


その人物は、極上の生地で仕立てられた見事な紺色の僧衣を身にまとい、僧衣の中にも同色で統一された格調高い衣を身につけ、手首には幅広の純白の袖飾りをつけている。


さらに、その胸元には、首からさげた、直径30センチ以上もあろうかと見える見事な十字架が輝いていた。

十字架には美しい数種類の大粒の宝石がちりばめられ、重厚な黄金の飾りが附されている。
まるで王家の秘宝と見まがうほどの豪華な十字架である。


そして、その十字架こそ、この殖民地において最も高位の司祭であることの証しであった。
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