コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第6章 同盟者
突然の申し出に、アパサは目を丸くした。

「なんの話だ?」

「わたしの甥は、今、クスコの神学校で学んでいるのだが、卒業したら、そなたの元で武術を学ばせてやりたいのだが」


アパサは全く取り合わぬ風情で、手をひらひらと振った。

「なんで俺がおまえの甥っ子の面倒なんか見なきゃならねえんだ。
冗談はよしてくれ」

「冗談ではない。
そなたの腕、この身で知ることかない、可愛い甥の師としてこれに勝る者はないと感じたのだ。
是非、お願いしたい」

そして、やや大袈裟ながらも真剣な口調でつけ加えた。

「この国の存亡に関ることかもしれないのだよ」



トゥパク・アマルの引き下がらぬ様子に、アパサはやや閉口気味に言った。

「なんでまた、甥っ子なんだ。
おまえには、息子だっているんだろう」

トゥパク・アマルは「受けてくれるね」と言わんばかりに少し身を乗り出しながら、静かな声で答える。

「わたしの息子はまだ幼い。
それに、息子ではスペイン人の役人たちにも目立ってしまう」


トゥパク・アマルは窓の向こう視線を馳せながら、「それに…」と、遠くを見る眼差しで呟くように言う。

「あれを見ていると、自分の若かった頃を思い出すのだよ」




それから、改めて、礼を込めた目でアパサを見た。

「アンドレスをそなたにあずけたい。
神学校を卒業したら、武将としてのそなたの腕を授けてやってはくれまいか」

「ずいぶん、その甥っ子を買っているんだな」


トゥパク・アマルは瞳で笑い、真っ直ぐアパサを見た。

「この後、わたしには何が起こるか分からぬからな」


アパサは、その意味を察した。

「命を粗末にするなよ」

「先刻は戦斧を振るってきたくせに、そなたに言われるのは妙な気分だな」

「フンッ…!」

鼻息を荒げてそっぽを向きながらも、まるで案じるのを悟られまいとでもするかのように、アパサは横目で相手にちらりと視線を投げた。




命を粗末にするな――そのアパサの言葉に、トゥパク・アマルは頷くとも頷かぬともつかぬ表情のまま、ただ静かな笑みを返していた。
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