コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第6章 同盟者
その晩遅く、トゥパク・アマルは、ようやくアパサと二人で話す時間をもつことができた。


アパサは薬草を塗って布でくるんだ左足をひきずりながら、部屋の一隅に置かれた巨大な木樽の方に進んでいくと、荒々しく栓をひねった。
樽の口から、勢いよくチチャ酒がほとばしり出る。


彼は、その酒を間口の広い木のカップに波々と入れて、その一つをトゥパク・アマルの前のテーブルに無造作に置いた。

チチャ酒は古来からアンデス地帯で愛飲されている伝統的なトウモロコシを原料とする酒である。
カップの上面から、ビールのような泡が滴っている。



アパサは、ぐいと自分のチチャ酒をあおった。

「おまえ、本気なのか」

泡のついた口を腕で拭きながら、トゥパク・アマルを探るように見る。


「本気だ」

トゥパク・アマルもアパサを見返した。


アパサはフンッと鼻息を吐くと、相手から視線をずらし、深夜の濃い闇しか見えぬ窓の方を見やった。
それから、またチチャ酒をすすりながら、カップの陰からトゥパク・アマルを覗くように見る。



やがて、カップを口から放して、低い声で言った。

「俺とて、スペイン人のやり口には、腸(はらわた)が煮えている。
だが…」

彼のトゥパク・アマルに向ける目が険しくなる。

「おまえがインカの皇族か何か知らんが、そんなことは俺には関係ねえ。
もともとインカは虫が好かねえんだ。
おまえの指図を受ける気はない」


トゥパク・アマルもチチャ酒を口に運んだ。
そして、アパサが先にしたように夜闇が広がる窓を見やってから、視線を眼前の男に戻した。

「もとより承知している。
この国で苦しんでいる人々を救う、そのことが一致しているならば、我々は同志になれる」


アパサの瞳の色が、微かに変わる。

トゥパク・アマルは、その意味を読み取りかねた。
が、敵意だけではない何かを感じた。



「トゥパク・アマル、忘れるなよ。
この国には、既にスペイン人に取り込まれちまっているインカ族も多い。
俺たちのように、古くっからの因縁でかつてのインカ帝国の奴らに恨みを持つ者もいる。
へたな反乱は、かえって同族同士で血を流すことになるのだ」
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