コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第1章 プロローグ
そして、これら、非人間的としか言いようのない代官の下には、インカ族の有力者、混血児などが、カシーケ(領主)として集落の長をつとめていた。


現在34歳になるトゥパク・アマルは、約9年ほど前からカシーケの一人として、ペルー南部高原の一部を成すティンタ郡内の三村――スリマナ、トゥンガスカ、パンパマルカ――を治めている。

カシーケの仕事は、代官の業務遂行の補佐であり、具体的には、その土地の収税、賦役の割り当てや監督、簡単な裁判などであった。



そんなカシーケの一人であるトゥパク・アマルが、これら代官の悪行をただ漫然と黙認していられるはずはなかった。
彼は自らの上司とも言えるこのティンタ郡の長、スペイン人の代官アリアガのもとを足しげく訪れていた。


アリアガは代官としてスペインからはるばる派遣されてきた、事実上、このティンタ郡内最高位の役人である。

スペイン本国で、彼はわざわざ多額の賄賂を払ってまで、植民地下のこの肥沃な地域の代官に任命されるためのあらゆる裏工作を行ってきた。
そして、数年前、ついにその念願かなって、この地に派遣されてきたのだった。


この代官の地位を買うためにスペインの高官たちに支払ってきた多額の賄賂の分まで、この土地で取り戻さねばならない。
そして、当然のことながら、当初の目的である自らの懐も肥やさねばならなかった。

そのためには、インディオたちから絞り取れるものはすべて絞り取ることが必要だ。
必然的に、アリアガの搾取は非道を極めた形となっていた。




部下からトゥパク・アマルの来訪を告げられたアリアガは、いかにも煩わしそうな表情をつくった。

「また来たのか」

この代官は、不当に徴収した二重課税の帳簿整理、ならず帳尻合わせに忙しかった。


「今日は先客があって会えないと伝えろ」

「どうしてもお話したいことがあり、何時まででもお待ちしますと言っておりますが」

部下も顔を歪めている。


アリアガは、でっぷりと太った巨体を苛々とゆすった。

「全くうるさい蝿だ」

吐き捨てるように呟く。


トゥパク・アマルがこの地のカシーケでなければ、どんなに「仕事」がやりやすいだろうか。
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