コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第5章 胎動
トゥパク・アマルはそのまま一晩馬を駆り、夜明け頃、トゥンガスカの集落に戻ってきた。

一晩雨の中を走り続けて体は冷え、疲れてはいたが、心は雨に洗われたためか、幾分平常心を取り戻しつつあった。



そろそろ、夜が明けていく。

見上げると、徐々に白みゆく空に、明けの明星が清らかな光を放っていた。
雨上がりの早朝の空は晴れ渡り、天頂は吸いこまれるような群青色だ。

空気もとても澄んでいる。




トゥパク・アマルは自らの屋敷に戻る前に、集落から少し道をそれ、ビラコチャの神殿まで馬を走らせた。


スペイン征服以降、時の止まったようなこの神殿は、今となっては平素から人影を見ることは稀である。
今もしんと静まり返り、誰かがいるとしても、せいぜいインカ時代の亡霊ぐらいだろう。





トゥパク・アマルは馬を下り、ゆっくりと神殿に向かった。


朝露が、山の端からこぼれはじめた朝日を受けて、キラキラと繊細な輝きを放ちはじめる。
かつてのインカ帝国の創造神が祀られたこの神殿に、あの栄華を誇ったインカ時代の頃と同じ夜明けの時刻が、今日も変わらず訪れつつあるのだった。



彼は神殿の先端に立った。

そこからは、日の出に染まりゆくコルディエラ山脈の雄大なパノラマが一望に見渡せる。



今、トゥパク・アマルが見守るなか、まるで彼に導かれるかのように、生まれたての太陽が山の端をくっきりと朱色に染め上げながら昇りはじめた。
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