コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第5章 胎動
石は素晴らしい勢いで宙を飛び、20~30メートル先の草の上にドスンと落ちて、その辺りの草を削りながら激しく回転した後、ゆっくりと止まった。


高台から見下ろしていたリャマの親子が、飛びすさって走り去っていく。



マルセラは肩で息をはずませながら、爛々と瞳を輝かせていた。
額には、うっすらと汗を滲ませている。


コイユールは、思わずパチパチと手を叩いた。

「すごい!」

「でしょっ!!」

嬉々とした得意満面の顔で、マルセラがこちらを振り返る。



が、次の瞬間、「痛ぁっ!」と右手首をおさえながら、その場にしゃがみこんだ。
コイユールが急いで彼女の手首を見ると、真っ赤に腫れている。

「ひねってしまったんだわ」

「いたぁぁ…」

マルセラは先ほどの雄姿はどこへやら、半べそで恨めしそうにオンダのバンドを見つめた。


コイユールは、彼女を草の上にゆっくりと座らせた。
そして、そっと自分の手をマルセラの患部に添える。

今ではコイユールのことを知っているマルセラは、素直に彼女のするがままに任せた。


しばらくすると、マルセラは、自分の手首のあたりに、柔らかな温かさが波動のように伝わってくるのを感じた。
次第に、痛みが和らいでいく。




一方、コイユールはマルセラの手首に意識を向けながらも、どこかで全く別のことを考えていた。


彼女は、先ほどのオンダのことを思った。

確かに、あの石がぶつかったら致命的な打撃になるのかもしれないけれど、だけど、それとスペイン人たちの所持しているピストルや大砲とは、とうてい比べ物にならない、というか、何か非常に次元の違うもののように感じられた。

いや、実際、次元があまりにも違うのだ。

こうした差は、武器に限ったことなのだろうか…?



コイユールは心の中で、深い溜息をついた。
なにか、自分たちがとても小さく、無力に思えてくる。

彼女はその思いを打ち消すように、首を振った。


そして、マルセラの患部に手を添えたまま、空を見上げる。
インカの神、太陽の輝く空は、彼女に希望を与えてくれるはずだ。



だが、少し陽の陰り始めた空は妙に遠く、高く、まるでとても手の届かぬ異界のように、ただ漠々と広がっているだけだった。

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