コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第5章 胎動
アンドレスの館で初めてトゥパク・アマルに出会った日の後も、アンドレスはコイユールに変わらず接した。

コイユールも、変わらず振舞っていた。



アンドレスがトゥパク・アマルの甥であったこと、増してや皇帝末裔の血縁であったという事実は、確かに、彼女にとって、彼との間にあまりに大きな隔たりを突きつけてくるものではあった。

それでも、この国を思う気持ちは、とても似ていた。
それは身分や立場の違いを超えて、二人をさらに深い絆に導いていた。


そのアンドレスも、もう随分前に休暇も終わり、今はクスコの寄宿学校へと戻っている。



それから、あの夜に出会った少女マルセラと、たまたま年齢が近かったことや、同じ集落に住んでいたことなどもあり、こうして時々一緒に過ごすようになっていた。


マルセラはインカ族の貴族の娘で、トゥパク・アマルの腹心ビルカパサの姪でもあった。
まるで少年のような風貌をした少女で、短く切った黒髪をターバンでまとめ、いつもスカートをたくし上げて、スラリとした褐色の足でカモシカのように敏捷に動いた。

凛とした眼差しは、あのビルカパサ譲りであろう。



さらに、マルセラは、コイユールにとって、よき「先生」のような存在でもあった。
貧しい農民のコイユールはまともな教育を受けることはできなかったが、貴族のマルセラはそれなりの教育を受けていた。




コイユールは、畑の端に大事そうに置いてあった、アンドレスからもらったあのスペイン語の教本を手に取った。
マルセラに聞きたい質問がたくさんあった。


「ねえ、マルセラ」

コイユールが本を差し出しかけたのを、マルセラが素早く制する。

「それは、あと、あと!」



そして、コイユールの傍の土手に座ると、両手の平に乗るような石の塊を懐から取り出した。
周囲を削って星のような形に整えられた重そうな石で、中央に穴が開いている。


「それは?」

コイユールが不思議そうな顔をするのを、マルセラは「やっぱり、知らないのね」と得意気な表情をつくった。


「あんたは、ほっんと、なんにも知らないんだから!」

それは、コイユールと会う時のマルセラの口癖である。
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