コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第4章 皇帝の末裔
「きちんと話そうと思っていたんだ。
驚かせて、すまなかった」


コイユールは自分の中から無性に込み上げてくるものを止められず、もう涙を流れるままにするしかなかった。


自分でも、涙の意味を整理できなかった。

インカ皇帝のこと、そして、アンドレスのこと――驚きと、喜びと、寂しさと、興奮と、様々な感情が混沌と渦巻き、それらがとめどなく突き上げてくるのだった。



コイユールの方を見入るアンドレスの瞳も揺れていた。

その瞳は、まだ少年のあどけなさを残している。
だけど、それだけではない何か……!


今、コイユールは、彼の中に二人の人間を見ていた。

まだ屈託のなさを残した明るくて朗らかで優しい少年の姿と、そして、険しく、強靭で、闘争的でさえあるような一人の大人へなりつつある青年の姿だった。





しばらく夜風に吹かれているうちに、コイユールも徐々に落ち着いてきた。


彼女の様子をうかがいながら、慎重に言葉を選びつつアンドレスが問いかける。

「トゥパク・アマル様のことも、聞いたんだね?」

「ええ…」

コイユールは、もう泣いてはいなかった。
そして、自分の心にも確かめるように、頷いた。



「あのお方なら、この国をインカの人々の手に取り戻してくれるかもしれない。
苦しみに喘ぐ人々を解放してくれるかもしれない…!」

そう言って、アンドレスは燃え上がる松明の炎を見つめた。
炎の光を受ける彼の目元には力が漲り、その横顔にはゆるぎない強い意志と決意の色が見てとれる。


「――だから俺は、あの方のためなら、どんなことでもするつもりだ!」



不意に木の枝がはじける鋭い音が響き、松明から吹き上がった真紅の火の粉が、どこまでも高く夜空に舞い上がっていった。
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