コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第4章 皇帝の末裔
「スペイン人が全て敵なわけではない」

しばらく黙っていた中央に座した男が、口を開いた。



コイユールは改めて、神殿で見たのと同じ、その人を見た。


今、少し落ち着きを取り戻しながら、近い距離で目の前にしてみると、一人の人間としてのその人の息遣いが感じられてくるように思われた。

それはただ神々しいばかりの幻想の人ではなく、やはり一人の生身の人間なのだった。
どちらかといえば感情を内に秘めたような寡黙な人物であり、重い難題に心を縛られているような影があった。


しかし、ただそこにいるだけで場の雰囲気を変えてしまう、何か強烈な存在感をもっていた。
そして、一言でも言葉を発すると、場の空気を瞬時に高揚させるような強いオーラのようなものを放つ。

ケチュア語の発音も、非常に流麗である。



「スペイン人の中にも、苦しい生活を強いられている者は多い。
敵はスペイン人なのではなく、この国の民衆を苦しめている暴政だ」

地の底から湧き出してくるような、深く響く声だった。


そして、続ける。

「わたしはスペイン本国に渡り、この国の暴政を改めるために、スペイン国王に直接会って直訴しようと考えている」


一同が、ハッと息を呑んだ。
張りつめた空気が流れる。



「いや、それは、待ってほしい」

初老のインカ族の紳士、ブラスが遮る。

「その役目、わたしが果たすべきと思っていた。
わたしは亡くなったサンセリテス殿とは親しい間柄だったからな。
わたしがスペインに渡った方が話も通りやすいだろう」


「ですが、これは非常な危険を伴う旅なのですよ。
サンセリテス殿のように殺されるかもしれないのです」

中央の男は、スペイン行きを名乗り出た初老の紳士に、真っ直ぐ向き直って言う。
その声音からは、相手の身を強く案じる思いがはっきりと読みとれた。



初老の紳士はその言葉に「わかっている」と瞳で頷き、意を決したゆるぎない声で言った。

「だからこそ、わたしが行くのだよ。

そして、万一、わたしに何かあった時、この国の民はお前が守るのだ。
トゥパク・アマル――!」

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