コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第4章 皇帝の末裔
「コイユールは両親を鉱山のミタ(強制労働)で、たった6歳の時に亡くしているんです」

アンドレスは大勢の厳めしい大人たちを前にしても、全く物怖じしない堂々とした口調で言った。


「ご両親は、どちらの鉱山に行かされたのだね?」

ひょろりとした細面の繊細そうな、というか、やや神経質そうな面持ちをした別の男が、コイユールに尋ねる。
その男も、アンドレスと同様、インカ族とスペイン人との混血のようだった。

「ポトシの鉱山だと聞きました」

緊張の混ざった震える声ながらも、コイユールは何とか答えることができた。



再び、男たちは深い溜息にも似た声を漏らす。

「標高5000メートルもの高所に坑道が掘られ、火口は赤黒く燃え…あの鉱山での労働は、まるで地獄絵さながらだ。
無期限の過酷な労働、虐待、食べ物もろくに与えられない…!」


アンドレスの叔父は巨人のような拳を握り締め、テーブルをダンッと激しく叩いた。

「畜生め…!」

大男が唸る。


それぞれの男たちの表情にも、強い憤りの色が滲んだ。



「今、ちょうど、ポトシの鉱山の話をしていたところなのだよ」

神殿で見たのと同じ、あの中央に座した人物が、コイユールに視線を向けて言う。

「ご両親のことは、本当に辛かっただろうね」

その目は憤りよりも、むしろ深い悲しみを湛えている。

コイユールは言葉も出ず、小さく頷いた。


他の男たちも頷き、そして、書類を広げて何かの相談に移っていった。




「サンセリテス殿は、殺されたらしい」

先ほどコイユールに両親のことを尋ねた、やや神経質そうな混血の男が小声で言った。

「フランシスコ殿、それは、やはり本当だったのですか?!」

アンドレスの叔父、ディエゴが目を血走らせる。


「フランシスコ殿の言う通り、サンセリテス殿は亡くなられた。
スペイン人たちは隠しているが、毒殺されたらしい。
恐らく、スペイン人たちに暗殺されたのだろう」

初老の紳士が、唸るよう答える。



一同は、また固唾を呑んだ。


またか――という、失望と重々しい空気が流れた。
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