コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第4章 皇帝の末裔
神殿での光景が甦る。


あの時、輝く黄金の光に包まれ燃え上がっていくかと思われた、その人がいたのだ。




インカの古来からの神、ビラコチャの神殿でその人を遠くから垣間見たとき、その神々しさに、太陽の御子、インカ皇帝の幻影を見たのかと思ったほどだった。

今はこの館の広間の中央に座し、やや伏し目がちに机上の書類に目を落としている。


コイユールは、自分がまた幻影を見ているのではないかと思った。
しかし、目を閉じたら再び見失ってしまいそうで、瞬きもできなかった。




あの時見たのと同じ、インカ族にしてはあまりに端正な、それでいて精悍な横顔に、煌々と輝く燭台の灯りが反射し、その切れ長の目の端が激情と憂いを秘めた光を放っている。

そして、あの時と同じように、かつてのインカ皇帝が身に着けていたのとよく似た黒ビロードの服とマントをまとい、腰まで垂れた漆黒の髪は、蝋燭の灯りを受けて濡れたように艶やかに輝いていた。



「アンドレス、そちらのお嬢さんは?」

中央のその人の右に座していた初老のインカ族の紳士が、コイユールたちに気付いて声をかけてきた。
白髪の混じりはじめたその紳士は、どこかアンドレスにも似た柔らかな雰囲気と風格がある。


「アンドレス様のご友人だそうです、ブラス様」

先ほどアンドレスと叔父の仲介をした鷲鼻の男が説明をする。
他の男たちもテーブルに広げた書類から顔を上げ、アンドレスとコイユールの方に目を向けた。


「駄目だと言ったんですが…」

アンドレスの叔父は、また気難しい顔をつくる。
そして、中央に座している人物、それはコイユールが神殿で見たその人だが、そちらの方にうかがうように軽く頭を下げた。



中央に座したその人は、穏やかな声で言う。

「かまわん。
アンドレスがそこまで信頼している友人ならば、怪しい者ではあるまい」


その言葉にアンドレスの叔父も、やっと安堵した様子で文句をやめた。




コイユールは声がかすれて言葉にならず、ただ深々と頭を下げた。


アンドレスは立ち尽くしている彼女をテーブル近くのソファに座らせ、自分もそのそばに座った。
夫人も、コイユールを守るようにして彼女の近くに座る。
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