コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
アフィリエイトOK
発行者:風とケーナ
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第17章 苦杯
アンドレスは返す言葉が見つからず、ひどく戸惑った顔つきのまま、眼前の友の顔を見ては、また慌てて足元に視線を落とし、そんなことを交互に繰り返している。


そんなアンドレスの肩に手を置いて、ロレンソはいつもの笑顔を真正面から向けた。

「これは、わたしと、そして、マルセラ殿との問題だ。
気にするな。
それより…」

そう言って、改めてアンドレスの瞳のずっと奥の方まで深く見通した。

「そなた自身の想いを形にせねばなるまい。
己の心を偽ってはならぬ。
真の心の声は、真にあるべき方向を指し示しているのだから」


アンドレスは熱く胸に迫りくるものを感じながら、吸い込まれるようにロレンソの目を見つめた。

己の心の中で頑なに凍りついていた何かが、力強い光を浴びて、僅かながらも氷解しはじめた――そんな感覚であった。






さて、再び、物語を現実的な状況に戻そう。

あのクスコ戦以来、トゥパク・アマル率いる反乱軍とクスコのスペイン軍とは、互いにピチュ山を隔て、無言の睨み合いを続けたまま数日間が過ぎていた。


そのような状況の中、全身から激昂のオーラを発し、まるで鬼のごとき形相をした一人のインカ族の男が、狂猛な勢いで馬を駆り立て、トゥパク・アマルの本営に乗り込んできた。

本営入り口の衛兵たちが必死で止めようとするのを男は乱暴に振り払って、騎馬のまま砂塵を蹴散らし、トゥパク・アマルの天幕傍まで、まるで討ち取りに来たかのような荒々しさで馬ごと乗り入れた。


「何事だ?!」

衛兵たちが血相を変える中、すぐにビルカパサが騒然としている兵たちをかきわけ、衆目の中央にいる人物の方に飛び出していった。


その人物は、真っ黒な埃まみれの顔をビルカパサに振り向けると、牙を剥いて轟然と吠えた。

「トゥパク・アマルはどこだ?!
あのオカマ野郎は!!」


「アパサ殿…!!」

ビルカパサは、予想だにしない突然の来訪者に、思わず目を疑う。



トゥパク・アマルの有力な同盟者の一人であるこのアパサは、反乱幕開けと共に、当ペルー副王領に隣接するラ・プラタ副王領にて挙兵してから、実に多くの戦果を上げていた。

しかしながら、現在も、アパサはラ・プラタ副王領で兵を指揮しているはずではなかったのか?!

「アパサ殿、突然、このようなところまで来られるとは、一体――?!」
352
最初 前へ 349350351352353354355 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ