コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第4章 皇帝の末裔
翌日、コイユールは、朝からどこかソワソワと落ち着かぬ気持ちで過ごしていた。

軽い興奮状態でもあった。
畑仕事をしている手も、ふっと止まりがちだった。

いつもと様子の違う彼女に祖母は気付いていたかもしれないが、何も言わずに見守っていた。


コイユールはその日も早めに畑をひきあげ、かわりに小屋に戻って祖母のために早めの夕食の準備を始めた。

(今夜、アンドレスの館に行ってみよう!)

そう彼女は決めていた。



素早く祖母の夕食を用意して、コイユールは急いで戸口を出た。
外は既に夕暮れの色に染まりかけている。

風もひときわ冷たくなっていた。




その時、ちょうど小屋に戻ってきた祖母とすれ違った。

「コイユール?
こんな時間に、まさか、どこかにでも行くつもりかい?」

目を見張っている祖母に、コイユールは返す言葉を慌ててさがした。
が、適当な言葉がみつからない。


「お婆ちゃん、心配しないで。
少し遅くなるかもしれないから先に休んでいてね」

「ちょっ…、これ、コイユール!」


スペイン人に嫁したフェリパ夫人を好意的には思っていない祖母に事情を説明することは、やはり、まだはばかられる。
当惑している優しい祖母の顔を見てしまうと、胸が痛んだ。


(ごめんね!
お婆ちゃん…)

目を合わすことができぬまま、彼女はアンドレスの館のある方向に小走りに去っていった。





夫人の館に着く頃には、すっかり日が落ちていた。


息を切らしながら、門のそばに近づいていく。
広々とした館の中央にある広間のあたりから、いつにも増して、煌々と灯りが漏れている。

門の周りは、いかにも厳めしい雰囲気だった。
インカ族と思われる数人の屈強そうな男たちが、険しい目つきで館の周辺を警護している。


いつもと違う緊迫した雰囲気に、コイユールは戸惑いを覚えて歩調をゆるめた。



すると、門の柱の陰からアンドレスが姿を見せた。

襟元や袖に青紫の縁取りの施されたベージュのビロードの服を着て、腰には金色の帯を締め、あきらかに正装しているということが分かった。
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