コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第17章 苦杯
従軍医から状況報告を受けた後、アンドレス自身も治療場を視察して回った。


今回のクスコ戦で敵の銃弾及び刃物や鈍器に倒れた兵たちの状態は、想像を絶する悲惨なものであった。

多くの者が致命傷を負っており、回復を待たずに息を引きとっていた。


一つの天幕には、特に、瀕死の重態の負傷兵たちが集められている。

その天幕の入り口の布をめくったアンドレスは、あまりに悲惨な光景に、一瞬、はっきりと目をそむけたほどだった。


そこにいる者たちは多くが、砲撃によって身体の一部を失い、あるいは、火傷等のためか殆ど全身を包帯で巻かれた状態であった。

それらの者たちが地に累々と横たわり、地面には血糊がベッタリとこびリつき、空気は血生臭ささと、そして、夏の熱気のせいもあるのであろう、傷口から発せられる、何かが腐敗していくような強烈な臭気とで、とても息のできる状態ではない。


苦悶の表情のまま、アンドレスは、改めて昨日の「リマの褐色兵」のことを思い起こす。

この治療場にいる多くの者たちが、同じインカ族の者たちから受けた攻撃によって死にゆこうとしているのだ――そう考えると、彼の胸は激しい憤怒と悲しみと理不尽さとで張り裂けぬばかりであった。


もはや、それ以上その現場を直視することができず、そこを離れかけた。



その時、不意に、同じ天幕の奥の方で、必死の様相で負傷兵の看護に当たるコイユールの姿が目に飛び込んできた。


アンドレスの心臓が、瞬間、完全に止まる。


彼は、はじかれたように物陰に身を隠した。

だが、どうしても、コイユールの方に視線が向いてしまう。
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