コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第17章 苦杯


翌日、トゥパク・アマルからの呼び出しの知らせを部下から受けたフランシスコは、すっかりやつれた顔面をいっそう蒼白にした。

ただでさえ細面の輪郭は今や頬がこけ、目はすっかり窪み、その下には黒ずんだ隈ができている。


(トゥパク・アマル様は、きっと、昨日の戦場でのわたしの醜態をディエゴから聞いたに違いない…!!)

にわかに呼吸が息苦しくなり、油汗が幾筋も横顔を伝う。

己の天幕の中で、フランシスコは、頭を両手で強く抱え込んだ。


今すぐ、この場から消えてなくなりたい――!!

それほどのひどく切迫した思いに駆られながらも、トゥパク・アマルから呼び出されているのに出向かぬわけにはいかなかった。


彼は力無く立ち上がると、激しい眩暈をこらえながら、ふらつく足取りでトゥパク・アマルの天幕に歩んでいく。



トゥパク・アマルの天幕の前では、いつものようにビルカパサが警護の目を光らせていたが、こちらにやってくるフランシスコの姿を認めると笑顔を向けてきた。

しかし、フランシスコの何やらただならぬ様子に、ビルカパサは心配そうに相手の顔を覗き込む。

「フランシスコ殿、とてもお辛そうですが、まだ具合がお悪いのですか?」

「いや、どうということはないのだ」


そう擦れ声で答えながらも、フランシスコにはビルカパサの態度が、ひどく白々しいものに思える。

常にトゥパク・アマルの傍近くにいるこの男のこと、もはや全てを知っているに相違あるまいに、素知らぬ顔をして。

腹の内では、このわたしのことを、なんと情けない奴かと酷く呆れていることであろうに…!


他方、当然ながら何も聞かされていないビルカパサには、そのようなフランシスコの胸の内など想像も及ばぬことであった。


「トゥパク・アマル様、フランシスコ殿がお見えです」

「入ってもらっておくれ。
それから、ビルカパサ、そなたは暫くはずしていておくれ」

天幕の奥からトゥパク・アマルの声がする。

「畏まりました」


恭しく返事をすると、ビルカパサは丁寧な手つきで天幕入り口の垂れ布を掲げ、いつもと変わらぬ笑顔でフランシスコを中へと促した。

「さあ、フランシスコ殿、どうぞ中へ。
トゥパク・アマル様がお待ちです」
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