コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第17章 苦杯
恥じ入るように咄嗟に両手で顔を覆うと、指の隙間から慌ててジェロニモに目で礼を送った。

それから、手を下ろし、己に呆れ果てて深く溜息をつく。

「ありがとう。
私ったら…信じられない。
こんなところで…」

無理に引きつった笑顔をつくろうとするコイユールから視線をそらし、ジェロニモは、彼女が立ち上がろうとするのを黙って助けた。


「ちゃんと自分の眠所に戻って、しっかり眠るんだ。
さあ!」

そう言って天幕の方に促すジェロニモの腕を制して、コイユールは治療場の方へと向きを変えた。

「いえ、もう眠ったから、大丈夫よ。
それより、治療場へ戻らないと」

「駄目だ!!
少しは、ちゃんと休め!!」

ジェロニモの剣幕に、コイユールは驚いて足を止める。


当のジェロニモ自身も、自分が声を荒げたことに決まり悪そうに下を向く。

が、また顔を上げると、今度は諭すように言った。

「この戦さ、まだ先は長いんだ。
今、皆で共倒れになっている場合か?
いいから、今夜は、ちゃんと休め。
な、コイユール…」


いつもとどこかジェロニモの様子が違うと感じながら、コイユールは観念したように頷いた。


寝所のある天幕の方へ戻っていくコイユールの後ろ姿を、ジェロニモが見守る。

(コイユール…そうなのか?
やっぱりアンドレス様のことを――か?!

だ、だけど、なんで農民のコイユールが、よりによって、あの皇族中の皇族のアンドレス様なんだよ?

無茶だ!
こんなのって、ありかよ?!

は…で、俺は……?
ハ…ハハ…ッたく、お話にもならねぇ!!)



一方、隣では、黒人兵が相変わらず憤然とした声を上げている。

「さっきの…うわ言?
『アンドレス』って、あれ、何だ?!」

そんな相手をジェロニモは険しい目で睨んだ。

「いいから、それは忘れろ!!
俺には、そんなの聞こえなかったぞ。
おまえの、何かの聞き間違いだ!」


ジェロニモはまるで自分にも言い含めるようにそう言うと、「なんなんだヨ…おまえまでぇ…」と、不満げにブツクサ言っている相手の肩を押しながら、それぞれの寝所へと戻っていった。
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