コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第17章 苦杯
否定しようとしても、己の見たものの信憑性をどこかで肯定しそうになる己自身も、非常におぞましく感じられた。

(あれは何を意味しているの?
…――破滅…滅亡…――死…――?!
まさか…ト…トゥパク・アマル様の…死?!)


「そ…そんな…そんな…」

いつしか涙すらも氷ついたように止まっている。

コイユールは、自分の体温が急速に下がっていくのを感じた。


夏だというのに、ひどい寒気がして、両腕で自分の肩を抱き締める。

細い指に、体の震える振動が伝わってくる。


これ以上、あの呪わしい光景の意味を決して考えぬように、コイユールは必死に思考を止めようとした。

が、止めようとすればするほど、思考は勝手に加速していく。


何かの言葉が頭をよぎろうとする度に、「あれは、ただの幻覚…幻覚…幻覚…!」と、呪文のように声に出して言い続けた。

しかし、己の心までは、偽れない。

そのまま彼女の意識はプツリと事切れ、混沌とした眠りの中に落ちていった。




それからどれくらい経った頃であろうか。


明け方近く、ビルカパサの連隊に属する一人の黒人兵が、見張りの当番を終えて寝所へ戻る途中、たまたまその草地の傍を通りかかる。

そして、草の中に死んだように蹲って意識を失くしている女性の姿を発見した。

それが同じ連隊に属するコイユールだと分かると、兵は仰天して、ジェロニモのいる天幕に飛んで行った。


「おい、ジェロニモ、起きろ!!
おまえの知り合いの女が草の中に倒れてるぞ!!」

「…――え?」


突然、夢を破られ、寝ぼけ眼でジェロニモが起き上がる。

「なんだよぉ…一体…」

朦朧としたまま、相手に急き立てられて、ジェロニモが草地に向かう。


「ホラ、あれ!
おまえの知り合いだろ。
何とかしてやれよ」

目をこすりながらそちらをボンヤリと眺めたジェロニモは、だが、草の中に死んだように倒れているコイユールの姿を認めると、たちまち顔色を変えた。
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