コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第17章 苦杯
ディエゴはゆっくりトゥパク・アマルの方に近づくと、傍の琥珀色の木箱の中から新しい蝋燭を取り出し、それに火を灯して古いものと取り替えた。

彼の筋肉質の大柄な手の中で、蝋の少なくなった小さな蝋燭は、まるで消え入りそうに儚く見える。

一方、新たな蝋燭は、安定した光を煌々と天幕に放ちはじめた。


「お加減はいかがです?」

案ずる瞳で覗き込むディエゴに、トゥパク・アマルは静かに微笑み、「心配をかけてすまなかった。もう大丈夫だ」と応える。

「して、あの褐色兵の将のことは、何か分かっただろうか」と、問う。


ディエゴは微妙に頷いた。

「あまりはっきりしたことは分からなかったのですが、どうも首府リマの役人たちとつながった裕福な家の出身らしい。
名はフィゲロア。
もとは、真っ直ぐで、まじめな男だったようです」

「フィゲロア…」


トゥパク・アマルは思慮深い目になって、暫し無言で新しい蝋燭の光を見つめた。

彼の切れ長の目元で、新たに燃えはじめた蝋燭の炎の放つ澄んだ光が、美しく反射して輝いている。


それから、彼は再びディエゴに視線を戻し、「ありがとう。よく調べてくれた」と心を込めて謝意を述べた。

ディエゴも、トゥパク・アマルの方に恭しく頭を下げる。


再び顔を上げたディエゴの目の中に、まだじっと彼の顔を見つめているトゥパク・アマルの眼差しが映った。

「トゥパク・アマル様?」

「ディエゴ。
もし、この後、わたしに何かあったら…」

そう言いかけて、トゥパク・アマルは、不意に己自身でも驚いたように、ハッと口を閉ざした。


思わずディエゴも目を見開く。

「トゥパク・アマル様、何を仰っているのです?!」


トゥパク・アマル自身も、予期せぬ弱気な言葉が己の口をついて出たことに、驚愕と苦渋の念を噛み締めた。

「すまぬ。怪我など負って、少々気弱になっているようだ」と、そして、「案ずるな」と前言を書き換えるように、はっきりとした口調で言った。
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