コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第17章 苦杯
「あのアンドレスは、危なげなほど純粋で、真っ直ぐなやつだが、潜在的には将たる器を備えている。
だが、あの者は、なにぶんまだ若く、未熟な点が多い。

しかし、いずれは、わたしではなく、あの者たちの時代となるのだ。
そのような時、真にアンドレスを支えてやれる者たちが必要だ。

コイユール、そなたのインカを思う気持ちをそのままに、この後も、アンドレスを支え続けてやってほしい」

「はい…!!
トゥパク・アマル様」


コイユールは感極まって、止まらぬ涙に目鼻も分からなくなった顔を両手で覆ったまま、幾度も幾度も頷いている。

トゥパク・アマルも、揺れる燭台の炎を映した瞳で微笑し、頷き返した。


そんなトゥパク・アマルとコイユールの様子を見計らいながら、従軍医が二人の間にそっと入る。

「さあ、トゥパク・アマル様、これ以上、お話しされてはお体に障ります。
コイユールも、さあ、もう…」

トゥパク・アマルの体を気遣う従軍医の言葉に、コイユールは我に返ったように、急いで後ろに下がった。



最後にコイユールが寝台のトゥパク・アマルに視線を馳せた時、彼は既に真っ直ぐ上に向き直り、蝋燭の影の揺れる天井を黙って見つめていた。


従軍医とコイユールは深く頭を下げて礼を払うと、音を立てぬように天幕を抜ける。

そして、激しい疲労と興奮を引き摺りながらも、二人を待つ負傷兵たちの元へと深夜の道を引き返していった。






その晩遅く、トゥパク・アマルの天幕に他の側近たちが誰もいなくなるのを見計らって、ディエゴが姿を現した。


トゥパク・アマルは寝台の上で、左腕に大量の包帯を巻いたまま、じっと天幕の天井を見つめている。

麻酔の無い状態で、術後の激痛も常軌を逸するものがあろうに、相変わらず苦痛は表に出さず、まるで小さな波紋さえも浮かべぬ湖面のように恐ろしく静かな横顔だった。


トゥパク・アマルの寝台傍に灯された蝋燭は、蝋の残りが少なくなり、揺れがかなり不安定になっている。


「トゥパク・アマル様、まだお休みではありませんでしたか」
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