コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第17章 苦杯
そんなトゥパク・アマル様が皇帝様として導いてくださるからこそ、私たちは進む道を信じて、誇りを持って戦える!

トゥパク・アマル様は、私たちインカの人々の魂の源、私たちの皇帝様――皆の希望の光なのです!!

だから、だから、絶対に、いなくなってはいけないのです!
ですから、さっきの、私の見たものは…あんなものは……!!」


コイユールは堰切ったようにそこまで言うと、むせぶように言葉に詰まった。

気付かぬ間に、幾筋もの涙が頬を伝って流れ落ちていた。


いつしか、従軍医も、コイユールを支えるようにその肩をそっと押さえながら、横に跪いている。


トゥパク・アマルは静かに目を細めた。

「そなた、アンドレスの屋敷と申したか?」

そう言ってから、遠い記憶を手繰り寄せるような表情になって、微かに瞳を見開いた。

「もしかして、まだアンドレスが子どもだった頃、あの会合の時に何度か来ていた、アンドレスの友だったという、あの娘か?」


コイユールは両手で涙をぬぐいながら、「はい…」と頷く。

「そうか。
名は何と申したか」

「…――コイユールと申します」

「そうか、コイユール。
そなたの思いは、よく分かった」


そう言って僅かに頷くと、言葉を継いだ。

「そなた、アンドレスとは、今も友なのか?」


コイユールは、一瞬、言葉に詰まる。

この数年間は、実際には、言葉の一つも交わせてはいなかったし、アンドレスが自分を今も友と思っているかも定かではなかった。

しかし、コイユールにとっては、それは「友」としてなのか――あるいは、もっと違う存在としてなのか、いずれにしても、アンドレスは、今も言葉に尽くせぬ大切な存在であることに変わりはなかった。




コイユールは、「はい」と頷き、真摯な眼差しでトゥパク・アマルの瞳を見た。

「そうか」と、トゥパク・アマルはゆっくり頷き、目を細める。
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