コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
アフィリエイトOK
発行者:風とケーナ
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第17章 苦杯
トゥパク・アマルは黙ったまま、天幕の天井に目をやった。

その横顔を、不安定に揺れる蝋燭の光が音もなく照らし出している。


従軍医も息を呑んだまま、コイユールに話しを促してしまったことを今更ながら悔やんでいるのか、引きつった表情になっている。


コイユールは自分の手足が震えてくるのを感じ、床の上に崩れるようにへたりこんだ。

そんなコイユールの様子に、トゥパク・アマルは再び彼女の方に視線を戻した。

そして、切れ長の目元に、澄んだ柔らかな光を浮かべて、そっと微笑む。

「よく話してくれたね」


「トゥパク・アマル様!!
これは…これは、私の勝手な幻覚のようなものです。
私は、未来を予知する力など、少しも持ってはおりません。
ですから、どうか、どうか、決してお気に留めることのないよう…!」

コイユールの必死な様子に、トゥパク・アマルは頷き返した。

「わかった、そうすることにいたそう。
だから、そなたも、そなたが見たものを、この後、決して誰にも言ってはいけないよ」

コイユールは、涙の滲みかけた目で、弱々しく頷いた。


これ以上コイユールに不吉なことを言わせてはまずい、とばかりに、従軍医が二人の間に割って入る。

そして、半ば諭し、半ば急かすように、コイユールを促した。

「では、そろそろ退かせて頂こう、さあ、コイユール」


しかし、コイユールは逆に、トゥパク・アマルの寝台の方へと近づいた。

そのまま寝台のすぐ脇に膝をつくと、殆ど泣き出すのではないかと思えるほどのその顔を、きっ、と真っ直ぐ上げて、きっぱりとした口調で言う。

「トゥパク・アマル様!!
あの…!
私、どうしても申し上げておきたいことが…!!」


既に天井に目をやっていたトゥパク・アマルが、少し驚いたように、またコイユールの方に視線を戻す。

そこには、険しいほどに思いつめた、必死の眼差しのコイユールの姿があった。


「トゥパク・アマル様…私、子どもの頃、ビラコチャの神殿で、トゥパク・アマル様を、偶然、お見かけしたことがあるのです」
330
最初 前へ 327328329330331332333 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ