コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
価格:章別決済
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第3章 邂逅
己の反応の大きさに自ら戸惑い、驚きを隠せぬコイユールの前で、アンドレスは、サッと身をかがめて素早く野菜を拾い上げた。
それから、それらを放心している相手の手に握らせる。


「明日、待っているよ。
今は詳しいことは言えないけれど、きっと君も驚くと思う。
それに、君がそいういう気持ちなら、きっと意味があると思う」

そう短く言い残して、彼は踵(きびす)を返した。


アンドレス!――と名を呼びたかったが、胸がつまって声が出ない。

少年の後ろ姿が夜の闇に消えても、コイユールはしばし動くことができなかった。





その晩、夫人の館からもらってきた新鮮な野菜を料理して祖母にふるまうと、老婆は久々の満腹感から、椅子にかけたままウトウトしはじめた。


「お婆ちゃん、ちゃんと寝ないと風邪ひいちゃうわ」

コイユールは祖母の肩を抱き上げ、寝具がわりに重ねた古衣(ふるぎぬ)の上に、そっと横たえた。

「すまないねえ…」

すでに眠りの世界に入りかけたまま老婆はつぶやくと、小さないびきを鼻から漏らしながら深い眠りに落ちていった。


コイユールは掛け布団がわりの衣類をいつものようにありったけ集めてきて、老婆にかけた。
彼女と祖母の衣類をすべて集めてきても、到底寒さを凌げる量ではなかったが…。



それから、蝋の残りの少なくなった蝋燭の火を急いで消した。
コイユールのような貧しい農民たちにとって、蝋燭は貴重品だった。

火の気がなくなると、しんしんと冷え込みがいっそう増してくる。
祖母がしっかりと布にくるまっているかをもう一度確かめてから、彼女は音を立てないように注意深くドアを開け、戸外に出た。

そして、外側から片手で静かにドアを閉めた。


一方の手には、しっかりとアンドレスからもらった本を持っている。
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