コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第17章 苦杯
「な…何でもありません」

無理に平静を装って答えるが、その声は明らかに震えている。


一方、トゥパク・アマルは、鋭い目になって真っ直ぐコイユールを見た。

「声を上げていた。
何か見たのだね?
偽らずに申してみよ」

トゥパク・アマルの貫くような視線から彼女は反射的に目をそらし、「いえ…何でもありません」と繰り返す。


(本当のことなど、決して言えない…!!
ああ…どうしたらいい…?!)

コイユールは頭が真っ白になりながらも、必死で言葉を探す。


トゥパク・アマルはコイユールの顔を見据えたまま、静かながらも、有無を言わさぬ強制力を秘めた口調で言う。

「そなたは、不思議な力を持っているようだ。
今、ここでそなたが見たものは、そなたを通じて、天がわたしに伝えようとしていることかもしれぬ。

偽らずに言ってごらん。
たとえどんなに良からぬことでも」


コイユールは引きつった表情で、トゥパク・アマルと床とを交互に見渡しながら、すっかり苦しそうな様子になっていた。

それでもトゥパク・アマルは、黙って、待っている。

ひどく重い沈黙の数分間が流れた。


見かねた従軍医が、諭すような口調でコイユールを促した。

「トゥパク・アマル様があのように仰っておられるのだ。
コイユール、申し上げなさい」

「でも…!」

苦渋に顔を歪めるコイユールに、従軍医は重ねて言う。

「コイユール、おまえの先程のような様子だけを見せておいて、何も話さないで終わってしまったら、周りはもっと不安になるものだよ」

「それは…」

コイユールが、もう一度、トゥパク・アマルの方に視線を走らせると、トゥパク・アマルは「その者の言う通りだ」と、低い声で言う。


ついに彼女は意を決したように話し始めた。

「畏れながら…先程見えたヴィジョンの中で…神々しく黄金色に輝く太陽のような光が、突然、赤黒い色に変わって…、その赤黒いものが溶岩のように宇宙に流れ出して、それから…、それから、その溶岩のようなものが…宇宙を呑みこんでしまいました…」

搾り出すような擦れた声で言うと、コイユールは、己の口から呪いの言葉を吐き出したかのようなおぞましい感覚に襲われ、思わずその手で口を押さえた。
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