コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第17章 苦杯
それでも、幾分なりともコイユールの力が効を奏しているのか、トゥパク・アマル自身の精神統一による自己暗示によるものなのか、あるいは、その相乗効果のためなのか、ともかくも、トゥパク・アマルはその身を切られ、縫い合わされる所業に、意識を覚醒させたまま見事に耐え切っていたのだった。

従軍医は、その強靭な精神力に深く感銘を覚えながら、一つのミスも犯さぬよう、慎重に施術を進めていった。


手術が開始されて、既に数時間が経過していた。

従軍医が、ふと横を見ると、コイユールは瞼を固く閉じ、トゥパク・アマルの腕に両手を添えたまま石のように微動だにせず、完全に意識がそこから離れた状態になっている。

その額からは、幾筋もの汗が流れ落ちていた。


トゥパク・アマルの傷口近くに添えられた彼女の指に従軍医がそっと触れてみると、まるで熱せられた鉄のような高温を帯びている。

彼は意識の無いコイユールの横顔に、静かに微笑みかけた。

(コイユール、頑張っておくれ!
もう、あと少しだ)


それから、従軍医は施術の仕上げに入っていった。




一方、意識を遥か宇宙の彼方まで飛ばしていたコイユールは、インカの太陽神のごとき黄金の光源の前で、今もひたすら祈り続けいている。

そろそろ手術の終わりが近いことを直観した彼女は、いっそう深く光源に頭を垂れた。

(お力をくださり、お見守りくださり、どうもありがとうございました)

光に深く感謝の礼を払うと、コイユールはそこから離れようとした。



が、その瞬間だった。

神々しい黄金色の高貴な輝きを放っていた光源が、突如、赤黒く変色したかと思いきや、たちまち溶岩が溶け出すようにドロドロと液状に変容し、怒涛のごとく宇宙空間に流れ出したのだ。



コイユールがギョッと身を強張らせる目の前で、赤黒い溶岩状の液体は、これまで星々が粛々と瞬いていた宇宙空間を、まるでその溶岩の中に全てを呑みこんでしまうがごとくに、激烈な渦を巻きながら巨大化していくではないか――!!

「アアッ…これは…ああっ――!!!」
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