コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第3章 邂逅
コイユールは、夫人からもらった高級そうな野菜を見下ろした。


「本当は、こんな…、いただくつもりで来たんじゃなかったのに」

「お金じゃないんだし、それくらい、もらってくれたっていいだろう」

「それは…とてもありがたいけど」

普段は、金銭ではなくても、一切ものを受け取ることはしなかった。
が、フェリパ夫人とアンドレスの前では、つい気持ちが緩んでしまうようだった。



やがて、コイユールは、つと立ち止まった。

そろそろ民家もまばらになり、これ以上先まで送ってもらうのは、逆に高貴な身なりをしたアンドレスの身の方が案じられる。


「ここまでで大丈夫よ。
どうもありがとう。
それに、本まで…どうもありがとう!」

そう言って、彼女はアンドレスに微笑んだ。


(また会えるのは、いつになるかしら…)

微かに胸の奥が痛む。
コイユールは、アンドレスからもらった本を握り締めた。

やはり長期間離れるのは寂しいことだった。
でも、仕方のないことである。




その時、しばらく物思いに耽ったように黙っていたアンドレスが、不意に口を開いた。

「コイユール、明日の今頃、またうちに来てみないか」

「え?」

突然のことに、コイユールは大きく目を見開く。


「君は、さっき言ったよね。
もし皇帝陛下が生きていたら、この国を俺たちインカの手に取り戻せるのか、って。
コイユール、君は、なぜ、あんなことを聞いたんだ?」

「な、なぜって……」


相手の急に鋭くなった眼差しに、コイユールは、自分が睨みつけられているのではないかと感じたほどだった。

すぐには言葉にならず、身をすくめながら胸元の本をギュッと強く抱き締める。




だが、やがて清く澄んだ瞳を真っ直ぐに上げて、相手を貫くように見つめた。


「私、このままでいいとは思わない…!
だから、もし皇帝様が生きていたら――そうしたら……」




そう言いかけて、不意に、これまで感じたことのない強い感情が心の奥底から突き上げ、そのことに自分で驚き、身を震わせた。


その手にあった野菜たちが、音を立てて地面に転がり落ちる。
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