コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
アフィリエイトOK
発行者:風とケーナ
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第15章 使者
それから、新鮮な空気を求めるように、上空を振り仰いだ。

晴れ渡った夜空には、粛々と輝く白い月と共に、アンデスの星々が無数に瞬く。

標高の高いアンデスの地では、星たちは、まるで手に届くように近くに見える。


アンドレスは、そっと上空に腕を伸ばした。

その動作に合わせるように、無数の流星が天から注ぐように降りしきる。

アンデスでは、流星さえも、とても間近い距離に迫って落ちてくる。

しかも、その数はとても多い。

一分間に、ほぼ10個程度の割合で、次々と降り注ぐ流星たち。

彼は、生まれた時から見慣れているはずのその夜空の光景を、まるで初めて見たかのように、恍惚たる表情で見守った。





そんな彼の視線の先には、今、高貴な輝きを放つ南十字星が瞬く。

南十字星――それは、太陽と共に、かつてのインカ帝国のシンボルでもあった星。


「チャカナ――」

その響きを確かめるように、小さくその星の名を呼んだ。


インカの公用語であるケチュア語では、南十字星を『チャカナ』と呼ぶ。

インカの人々にとって、『チャカナ』はアンデスの秩序を表すシンボルであり、その十字型の星の上半分は理想的世界を、そして、下半分は現実的世界を表すと言い伝えられてきた。

その両者は、互いに補完し合いながら、真なる秩序を循環させ、保つ――そのような世界観のもと、インカの人々は、末端の民衆も、彼らを庇護する皇族たちも、互いに支え合いながら、平和と安寧を保ち、大地と天空と共に生きていた。


それが、海の彼方から突如として現われた少数の侵略者たちに、たちまち征服されたインカ帝国の苦い過去。

しかも、かつての祖先であるインカ帝国時代の実直な人々は、海を越えてきたそれら白い人々を純粋に信じたが故に、欺かれ、騙され、残忍な侵略者の手中に落ちたのだ。


それからの二百年間、インカの人々や混血児のみならず、黒人はもちろん、当地で生まれたスペイン人でさえ、惨憺たる圧制下に置かれてきた。

アンドレスは、鞘に収めたはずのサーベルの柄を、再び強く握り締める。
300
最初 前へ 297298299300301302303 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ