コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第1章 プロローグ
かくして、面会室に足を踏み入れようとドアを開けた瞬間、真っ直ぐにこちらに視線を向けていたトゥパク・アマルの目とアレッチェの目が、完全に合った。

「――!!」

そのインディオの視線、それは、矢で貫くような鋭い眼差しだった。


一瞬、射抜かれたと思ったのは、アレッチェの方だった。

しかし、アレッチェもすぐに視線を返し、二人はしばし無言で互いを見つめた、いや、睨み合ったと言った方が正確だろう。


インディオというには、あまりに隙なく美麗な顔立ち――その褐色の美貌の中で光る切れ長の目は、恐ろしく澄み切っており、この瞬間にすべてを見切ったかのような自信すら湛えている。

背丈もスペイン人の己と同じほどに長身で、その引き締まった身に纏う漆黒のマントには艶やかな長髪がかかり、不気味なほどの存在感を放っていた。




アレッチェは直観的にそのインディオにひどく危険なものを感じた。
そして、そのインディオに自分も値踏みをされているのではないか、という言いようの無い不快感が突き上げた。


このインディオがわざわざ自分に面会を求めてきたのは、この国の支配者の一人として多大な権限をもつ「植民地全権巡察官」たる己を、それが一体どのような人物なのか、我が目で見定めておかんとの気構えによるものではないのか?!
そんな妄想が湧き上がってくる。

いや、きっとそうに違いない!――アレッチェの中でそれは確信に変わった。
トゥパク・アマルの突き刺し、見通すような鋭い視線は、アレッチェの妄想を確信に変えるのに十分だった。


尊大なほどに落ち着き払った一人のインディオの前に、冷静冷徹なはずの自分が動揺しているさまに自ら吐き気を覚えた。
この自分を値踏みしているのだ!
なんたる侮辱か、たかが野蛮で下賤なインディオごときに!



アレッチェは非常な屈辱感を覚えながら、顎を反らして相手の前に立った。

「なぜ今さら、死んだインカ皇帝の子孫であるなどの承認が必要なのだ」

アレッチェはわざと聞き取りにくい早口のスペイン語で、冷たく言い放つ。


「"インカ(皇帝)"を偽って名乗り、民衆を搾取し、苦しめようとする者が後をたたないためです」

トゥパク・アマルの艶やかな低い声は、深遠なまでに冷静で、しかも、スペイン人のアレッチェが聞いても驚くほどに滑らかな美しいスペイン語だった。
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