コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第15章 使者
それから、彼女は、はたと思い出したように、懐からインカローズの石を取り出した。

先ほど手の汗ですっかり汚してしまったことを思い出し、素早く衣服の端で石を拭くと、まだ微かに頬を上気させたままそれを差し出した。

「これ…ありがとうございました」

やはり微妙に視線を石に落としたまま、マルセラが言う。


そんな彼女の様子をうかがうように、ロレンソも問う。

「どうでしたか。
その石、そなたを守護してくれましたか?」


マルセラは素直に頷いた。
確かに、あの場で、この薔薇色の石に力を与えられたと感じたからだった。


その様子に、ロレンソは目を細め、「それでは、その石は、そのままそなたが持っているがよい」と言う。


「え?!
でも…!!」

目を見開いているマルセラに笑顔を返して、ロレンソは己の兵たちに出立の合図を送る。

他方、マルセラは戸惑いの表情で、「ロレンソ殿!これは、戦場であなたを守護してくれていた大切な石でしょう!!」と、陽光を受けて美しく輝くその石を、懸命に彼の方に差し出している。


ロレンソは、穏やかな眼差しで微笑んだ。

「さあ、戻りましょう。
急ぎ、トゥパク・アマル様にご報告せねばなるまい」

「でも……!!」


ロレンソは愛馬の手綱を繰って踵を返しながら、まだ馬上で石を手に、揺れるような瞳を向けているマルセラをチラリと見た。

「そなたに、持っていてほしいのだ」

それから、微かに彼も頬を染め、彼女から視線を前方に移すと、掛け声と共に、兵たちの陣頭に立って馬を疾走し始めた。


マルセラも慌ててその後を追う。

こうして、ともかくも、一行はトゥパク・アマルの待つインカ軍の本営へと戻っていったのだった。




一方、インカ軍本営の入り口よりも大分手前で、馬に跨ったアンドレスが全く落ち着かぬ様子で、何時間も前からマルセラたちの戻るのを待ち侘びていた。

クスコの方角からロレンソの兵たちに守られるようにしてこちらに馬を駆ってくるマルセラの姿を見て、アンドレスもまた、深い安堵の溜息をついた。


そして、一行が戻ってくるのを待ちきれず、はじかれたように、そちらの方に馬を飛ばす。

「マルセラ!
よくぞ無事で戻られた!!」
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