コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第15章 使者
「我らの総指揮官は、司祭様に害を加えることはもちろん、クスコの皆様の誰一人とて傷つけることなど、望んではおりません!
戦さなど…戦さなど、決して望んではいないのです!!

我らが総指揮官は…ただひたすらインカの地に生きる民の負担を少なくすることを願っているだけなのでございます。
それ以上は何も…本当に、何一つ、望んではおりません!!

ですから、これ以上、この国に住まう誰一人の血も流さずに、この戦さをおさめたいと…そのために、司祭様のご理解とお力添えが必要であると申しているだけなのでございます!
司祭様、どうか総指揮官の言葉をお聞き届けくださいませ!!」


この時のマルセラの中には、己の保身のことなど微塵もありはしなかった。

ただ、トゥパク・アマルの願うがごとく、このインカの聖都を血に染めたくない、誰一人の命も、たとえ敵の命であろうとも、奪うことも奪わせることもしたくないと、そして、流血を見ずに、この事態をおさめたいと、ただもうそのことのみに己の全てを完全に投じていた。


しかし、モスコーソは、「それ以上言うな!!それ以上言うと、余の憤怒の火が、おまえをも焼き尽くすであろう!!」と、あの奇態な光をギラギラと放つ血走った双瞼で、マルセラを厳しく制した。


「モスコーソ様!!
どうか…――」


「言うな!!!」

最後通告を尽きつけるがごとく、有無を言わさぬ冷徹な口調で司祭が遮る。

そして、全身から激昂のオーラを漲らせ、憤怒に燃える魔人の形相で、マルセラを睨みつけた。


思わず、マルセラは、手の中の石を強く握り締める。
水を零したかのように、拳の中は汗で溢れていた。


既に凄まじい形相に成り代わっているモスコーソを前に、もはや何を言っても無駄であろうことをマルセラは悟った。

まるで己が硬い床の中にどこまでも吸い込まれていくかのような、激しい眩暈と無力感に襲われる。
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