コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第15章 使者
書状に意識を集中し始めるモスコーソの目の中に、トゥパク・アマル直筆の、あの非常に整った文字と、スペイン人さえも及ばぬ澱みなく流麗なスペイン語の文面が展開する。

そのさまに苦々しさを噛み締めながらも、モスコーソは書状を目でなぞっていく。


その内容は、さしずめ下記のごとくであった。

なお、以下に掲載するのは、歴史上の資料として残る、トゥパク・アマル自身の手による司祭宛ての本物の書状(抜粋)である。



『司教陛下

聖にして聖なる洗礼を受けたキリスト者として申し上げますならば、カトリックの深い信仰をもつ教会の子は、崇拝する神の殿堂を汚すことは決してできませぬ。

且つまた、神父様たちに逆らうこともできませぬ。


ただ、此度の一連の行動の意図は、代官と呼ばれし暴君たちの愚かにして極道な悪事をみ、わが国の忠実なる臣民の戸口から金を搾り取り、暴虐の限りを尽くすのを知りまして、これを正そうと考えた結果であります。

わたしは、このファラオ(註:暴君)の絆を断ち切ってくれる人の現われるのを念じつつ、結局、わたしはこの王国の防禦のために立ち上がったのであります。

今や、わたしは我らの君主カルロス陛下に対する裏切り者、謀反人と呼ばれておりますが、わたしが忠良なる臣民であり、聖なる教会、カトリックの王に些かも背かなかったことは、やがて歴史が明らかにしてくれましょう。


わたしは単にこの国の暴君を除き、真の意味で聖なるカトリックの教えが守られ、平和と静穏の中に生きることを願ったのであります。

然(しか)るに、わたしの真意は、これ以上、武器を取り、火と血をもって事を進めることを願ってはおりませぬ。

ましてや、この麗しきクスコ市にて、戦火を交えることを決して望んではおりませぬ。

それは、司教陛下とて、同じお気持ちであられるのではありませぬか。


しかしながら、既に我がインカ軍は、当クスコの地を睥睨するに至り、もし貴下の兵たちが抵抗をなさる場合には、我らとて、望まぬ刀の錆を増やすことになりましょう。

どうか司教陛下の高貴なるご賢察を賜りたく、伏してお願い申し上げます。
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