コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第3章 邂逅
「コイユール?」


アンドレスの声に、彼女は我にかえり、声の方に視線を戻した。


「神殿の壁にもたれた男の人が夕陽を見ていたのだけど、西日の光が当たって、まるで金色に燃え上がるようだったの。
私…インカの皇帝様が、生き返ったのかと思ってしまったくらいよ!」

コイユールの声が、興奮で微かに震えている。


アンドレスは頷きながら、相手をなだめるように言った。

「それで…どうなったんだい?
その人は、誰だったのか分かったの?」

コイユールは首を横に振った。

「気がついたら、消えてしまっていたの。
それで、コンドルが飛んでいって…」


やや混乱した彼女の話に、しかし、アンドレスは静かな声で応じた。

「誰だったんだろうね。
いったい」



サッとまつ毛を伏せて、コイユールは膝の上で華奢な褐色の両手を握り締めた。

「ねえ、アンドレス」

そして、また真正面から相手を見つめる。

「もし…、もしインカ皇帝様が生きていたとしたら…、そうしたら、この国は、また私たちインカの人々のもとに戻るのかしら?」


彼女の貫くように真剣な眼差しを受けて、アンドレスは少し沈黙した。
それから、込み上げる感情を押し殺した声で答える。

「いや…。
たとえ、皇帝陛下が生きていたとしても、それだけでは駄目だろうな」

一瞬、言葉を切り、そして、再び言葉を継ぐ。
その声音には、押し込めたはずの怒りが滲み出す。

「昔のインカ皇帝だって、ことごとく酷いやりかたで殺されてきたんだ。
恐らく、また同じことが起こるだけだろう」




アンドレスの言葉に、いつしか涙を滲ませているコイユールの前から、彼はスッと離れて窓際に立った。
ガラス越しに降り注ぐ斜光を受けて、険しくなった彼の瞳が黄金色に反射する。


その瞬間、コイユールの目に、あの時、神殿で見た光景が完全に重なった。




息をつめる彼女の前で、後ろ姿のままアンドレスが続けていく。


「たとえ皇帝陛下が生きていたとしても、スペイン人から闘って勝ち取らなければ、この国はインカの人々の手には決して戻ってこない。
だから、俺は――」
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