コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第15章 使者
無意識のうちに、ロレンソから授けられたインカローズの石を強く握り締める。

不思議にも、その石から手の平に強力な波動のようなものが流れ込み、己のエネルギーが高まっていくかのような錯覚を覚える。


意を決し、マルセラは、今一度、司祭に深く礼を払った。

そして、精一杯に声音を落ち着けて、トゥパク・アマルから預かってきた書状を恭しい手つきで掲げ上げた。

「私は、我がインカ軍の総指揮官から派遣されて参りました。
こちらのお手紙を、司祭様にお持ちするようにとのことでございました」


モスコーソも、クスコの戦時委員会の面々も、内心、この予想外の意外な風貌の使者に驚きを抱いていた。

マルセラ特有の透明感と中性的な雰囲気は、憎悪の極みに達していたスペイン役人や司祭にとってさえ、下手に威圧感を与えることなく、尚且つ、どこか中立的な雰囲気を醸し出してもいたのだった。


トゥパク・アマルの使者となれば、果たして、いかに料理してくれようか!!――とばかりに、先ほどまで眼を血走らせ、いきり立っていたモスコーソも、今は冷ややかながらも、その眼の光は僅かに静まっている。


マルセラは、ありのままの真摯な瞳でモスコーソを真っ直ぐ見上げ、「司祭様、どうぞ、こちらのお手紙にお目通しください」と、手の中の書状をさらに高く掲げ上げた。

その目の色に引かれるように、モスコーソはトゥパク・アマルの書状を受け取り、厳かな手つきで広げていく。


「トゥパク・アマルめ…この期に及んで、一体、何をたくらんでおるのじゃ」

書状を開きながら、憎々しげな声がモスコーソの歪んだ唇の端から漏れる。


その場の全員が息を詰め、接見の間に、強い緊張感と張り詰めた空気が流れた。

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