コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第15章 使者
ふと、そんなロレンソの視線に気付き、相変わらず馬を疾走させながら、マルセラが訝しそうな目を向けた。

「何か?」

不意にマルセラと視線が合い、「いや…」と、やはり馬を駆りながら、ロレンソが口ごもる。


一方、マルセラも、内心複雑な心境でロレンソの護衛を受けていた。

前方に視線を戻しながらも、マルセラは微かに頬を染める。

そもそも、殆ど自分を男と思ってきたような彼女は、他者を護衛することはあろうとも、己が護衛される――守られる――ことなど、全く、不慣れなことだった。


微妙な沈黙が二人の間に流れ、とはいえ、それは互いにとって、何か説明し難い、これまで未体験の不思議な瞬間、二人は否定するかもしれないが――甘美な瞬間、でもあったのだ。

が、そんな時間もたちまち終焉し、まるで二人の行く手を阻むかのように、眼前にはクスコ市の厳めしい城門が見えてくる。




一団は馬を止めた。

その場にいる全員が息を呑み、ついに現実として目前に現われたクスコの門を見つめる。


それから、意を決したように、マルセラがロレンソを見た。

そして、深く礼を払って言う。

「ここまでの護衛、誠にありがとうございました。
この後は、私一人で参ります」


不安を決して表に出すまいとしているマルセラの気丈な様子が、かえってロレンソには痛々しく思え、この期に及んで急に彼の心を掻き乱し始める。

本当にこのような形で良かったのだろうか、昨夜、自分が使者に立つことを、もっとしかと通すべきであったのではあるまいか?!――そのような念が、急激に彼の胸に襲いくる。
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