コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第15章 使者
「え?!」

驚愕して目を見張るコイユールの瞳の中で、「何となく、あんたの顔を見たくなったから…」と、マルセラは笑顔をつくりながらも、物言いたげにじっと自分の方を見つめている。


マルセラの瞳には強い覚悟の色が窺えたが、さらにその奥で、彼女が押し込めようとしている渦巻くような不安と恐怖の念が、コイユールの中に激しく流れ込む。

二人は震える眼差しで、暫しの間、ただひたすら互いの目を見つめ合った。


「駄目だね。
やっぱり、あんたの顔を見てしまうと、あんなに張り詰めていた気持ちが緩んでしまう…。
ここに来ちゃいけなかった…」

擦れ声で小さく呟くマルセラを、コイユールはかける言葉もなく、ただ、しっかりとその腕で抱き締めた。


彼女の腕の中で、平素は男勝りを装うマルセラの細い肩が、明らかに震えている。

極度の心配とせつなさで、コイユールは言葉も出ず、ただもう夢中でその細い肩を抱き締めていた。


いつの間にか瞳から涙を零しているコイユールの腕からそっと離れ、マルセラが、ありがとう、と囁く。

それから、「そんなに心配しなくて、大丈夫よ」と、笑顔を見せた。

「私はトゥパク・アマル様の書状をお渡しするだけだし、それに、こんなお役目を果たせることを誇りに思っているんだから」


コイユールも、涙を落としながらも、深く頷き返した。

「私…本当に、いつも何もできないけれど…でも、祈ってる。
夜が明けたら、明日はマルセラのためだけに、ずっと祈ってるから!」

必死な面持ちで言うコイユールに、「ありがとう!あんたのは、本当に効くものね」と、マルセラはいつもの闊達な笑顔を取り戻し、応じた。


それから真面目な顔になって、真っ直ぐにコイユールの顔を覗き込む。

「あのさ…コイユール。
以前、私が、アンドレス様を冷たいお人だと言ったこと、あれは撤回するよ」

そう言うと、頬を少し赤らめて、コホンと軽く咳払いをした。
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