コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第3章 邂逅
コイユールは、一瞬、瞳を輝かせたが、すぐに冷静な表情に戻って視線を落とした。
そして、本をアンドレスに返す。

「でも、私、スペインの言葉は…」

「君がスペイン人をよく思っていないことは知ってる。
それは、混血の俺だって同じだ」


コイユールはハッとして、顔を上げた。

「ごめんなさい…」

「謝ることはないさ。
俺は、自分はインカの人間だと思っている。
たとえ、白人の血が入っていても。
父上だって……」

そこまで言いかけて、アンドレスは言葉を切った。
彼の父親はスペイン人の神父だったが、今は生きてはいなかった。



「この先、スペイン人と渡り合っていこうと思うなら、文字ぐらいは読めるようになっていないといけない。
それに、ずっと感じていたよ。
君だって、本当は、いろんなことを学びたいんだろう」

アンドレスは澄んだ瞳で、真っ直ぐにコイユールを見た。


自分の心を見透かされたような気がして、コイユールの頬がわずかに紅潮する。
それから、観念したように、素直に頷いた。

「ええ。
私、本当は、もっともっとたくさんのことを知りたいし、学びたい!
そして…」

そこまで言いかけた時、アンドレスの視線を強く感じてコイユールは言葉を呑みこんだ。
アンドレスは、彼女の言葉の続きを待っていた。


コイユールは言葉を呑み込んだまま、相手の手にある本を受け取った。

「ありがとう、アンドレス」





しばらく沈黙が流れた後、コイユールがぽつりと言う。

「ねえ、アンドレス、私、不思議な光景を見たの」


それから、だいぶ陽の傾きかけた窓の方に目をやった。
透明なオレンジ色の西日が、二人を包みはじめている。

コイユールは、まばゆげに目元を細めた。

「ビラコチャの神殿で……」

そう言いかけて、再び言葉につまった。


あの時の情景がありありと思い出され、その場にいるような激しい錯覚にとらわれたのだった。
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