コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第15章 使者
しかし、ビルカパサは感情を統制し切ったあの面持ちで、短く、毅然と応ずる。

「トゥパク・アマル様の決定は絶対です。

それに、もしマルセラがそのような目に合おうとも、あるいは、生きて戻れぬとも、それはマルセラの運命がそこまでであったということ。

その時は、マルセラは、もはや最初からいなかったものと思うしかありませぬ」


「なっ…――!!」

アンドレスは思わず絶句し、だが次の瞬間には、全く無意識のなせる業であったが、本人も止められぬまま、非常に険しい眼でビルカパサを睨みつけていた。

「ビルカパサ殿、それでは、何かあればマルセラを見捨てると?!」


ビルカパサは顔色一つ変えず、「その時は仕方ありませぬ」と、短く答える。


殆ど反射的に、アンドレスの指がビルカパサの襟元に掴みかかった。

「ビルカパサ殿、あなたは…あなたは、なんという冷たいお人だ!!

マルセラは、我々にとって、かけがえのない仲間なのですよ!

ましてや、あなたの姪ではありませんか!!」


既に鍛え抜かれたアンドレスの指は、同様に逞しいビルカパサの首さえもガッチリと締め上げるのに十分だった。

アンドレスの指は、憤りに震えながら、さらにビルカパサの首を締め上げる。



ビルカパサは完全に息の根を止められた状態で、その顔色がたちまち青黒く変異していく。

それでも、彼はアンドレスに掴みかかられたそのままの体勢で、「アンドレス様、マルセラの身をそこまで案じてくださること、誠にありがたきことに存じます」と、擦れた声で恭しく言う。

すっかり興奮状態にあるアンドレスには読み取れはしなかったが、ビルカパサの瞳には、全く嫌味な気配はなく、むしろ誠実さと感謝の念に溢れていた。
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